20211109 NO.1
◎今治市水道事業
市民生活に欠かすことができない安全・安心な水を供給する水道事業は、全国的に、そのほとんどが公営企業の形で運営されている。今治市においても例外ではなく、水道事業運営に必要な経費は、経営に伴う収入(料金収入)をもって充てる独立採算制を基本として経営されている。
また、地方都市における水道事業は、そのほとんどが高度成長期に本格運営を始めており、更新時期を迎えた施設・設備を多く抱えている。今治市でも、50年間にわたり水道水供給の中核を担ってきた小泉浄水場代替の(仮称)高橋浄水場をイオンモール近くに建設している。
photo-1 高橋浄水場 アルミドーム屋根の配水タンク
photo-2 浄水場心臓部のセラミック膜ろ過装置
・今治市の水道料金
水道事業運営に必要な経費の、人件費、薬品費、動力費などに減価償却費等を加えた営業費用と、支払利息、資産維持費の資本費用を合わせたものを総括原価と呼ぶ。独立採算経営を行うためには、料金収入が総括原価と同等以上でなければならないが、今治市の現在の料金では総括原価の8割程度しか賄うことができない。
水道事業者として、可能な限り施設の統廃合を進めて維持管理費の抑制に努めてはいるが、管路などの更新や耐震化を進めて事故・断水を予防しなければならず、総括原価は増加していく見込みとなっている。下のグラフに示されているように、10年後の2031年に料金単価を総括原価に到達させるためには、3年毎に12.3%ずつの値上げが必要になる。
あまりにも急激な値上げは市民生活に与える影響が大きすぎるので、ぎりぎり経営が維持できる範囲内で算定されたのが、3年毎に8.3%ずつ値上げするもので、総括原価到達のためには2031年以降さらに数回の同率値上げが避けられない。
photo-3 水道料金算定表
この8.3%値上げ案は、今治市水道事業経営審議会が市長の諮問に答えたものだが、同時に、コロナ禍の影響に配慮することを求められたので、徳永市長は議会質問に答える形で今回の料金改定見送りを表明した。見送られた料金改定はそのままスライドさせるのか、1回だけ遅らせるのか、予定より減収になった金額は一般会計から特例的に繰り入れるのか? そういった議論はまだ始まりそうにない。
グラフ中の総括原価と料金単価との差額は後年度に先送りされることになり、世代間の公平の観点に立てば、できるだけ早く解消すべきと考えられる。
もう一つ、留意しておかなければならないのは、人口減少による負担割合の増加。水道事業の運営費は利用者が分担しており、給水量が減っても運営費はほとんど変わらないので、人口減少は料金値上げに直結してしまう。
本稿では水道料金について述べているが、人口減少社会では他の公共料金や公共施設の維持管理費など、一人ひとりの負担が大きくなってくる。常に、このための対策を考えた政治活動を行い、誰もが住みやすい社会実現を目指したい。
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