20180207 NO.2
◎田舎の学校きらら
新潟県柏崎市の中心部から13qのところにある別俣(べつまた)地区。桃源郷を思わされるような美しい盆地の農村集落であり、ここに130年を超える歴史を持つ別俣小学校があった。少子化の進行に伴い平成17年に閉校になったのだが、その木造校舎は築60年で、ノスタルジックな地域景観の象徴ともいえるものである。

閉校にあたって市の教育委員会は、活用策がないことや維持管理の財政負担を理由に解体・撤去の方針を示したが、地元有志の強い気持ちと努力で校舎が存続され、農村体験交流施設「田舎の学校きらら」として活用されている。この施設を拠点とする取り組みについては、平成28年度の農林水産大臣賞受賞に輝いており、ここを視察する機会に恵まれたので報告する。

photo-2   記録的寒波の日に訪問
photo-3   2階廊下

「木造校舎をふるさとのシンボルとして次世代に残したい」と考えた地元有志は、行政や議会に対して存続を訴えるとともに、集落への説明会を繰り返して、傍観者、反対者を説得し続けた。さらに、資金面を自己責任で賄うことなどを確約する念書を書くまでして柏崎市からの校舎譲渡にこぎつけた。

校舎譲渡は、地元有志8人が任意団体「別俣農村工房」を設立して受け入れし、8人の個人による分割登記とした。受け入れに際して、10年間の活動を見越し、自己資金を出しあって1千万円を用意したというから、その覚悟の強さがうかがい知れる。大したものである。

校舎を学校施設から農村体験交流施設(用途カテゴリーは多目的集会施設)に変更するにあたって、法令上、防火設備の増改修、耐震補強などの改修工事が必要となり、新潟県のグリーンツーリズム促進補助金650万円を得たものの、上記自己資金の6割以上を予期せぬ形で消してしまい、不安を抱えたまま平成20年4月に農村体験交流施設「田舎の学校きらら」の開校を迎えた。

photo-4   教室窓の耐震補強鋼製筋交い
photo-5   1階廊下

田舎の学校ということで、元の家庭科室などでのそば打ち、味噌・コンニャクづくりなどの食育体験、旧音楽室での竹細工、わら細工などの体験、学校付近の休耕田でのコメ作り体験など、多くの安価な有料体験プログラムを用意したイベントを年間通じて開催している。

この他、地産の食材を使った食堂・居酒屋の営業をしていて、食堂は予約を主とする月4回程度の営業でありながら、年間200万円程度売り上げている。居酒屋のほうは、営業収益を目指すものではなく、地域内でのノミニケーションとして盛り上げていくとのことである。

photo-6   体験プログラムを行う旧音楽室
photo-7   食堂兼居酒屋

施設運営の財源は、農村工房のオーナー会員制度で対応している。別俣農村工房へのサポーターとして、年会費1万円で、秋の収穫期にハサカケ米、手づくり味噌、杵つき餅など、会費の半額相当を返礼する。会員は別俣小学校卒業生を中心とする70人程度で、これにふるさと食堂の収益を加えたもので、光熱費等年間60万円程度の費用を賄っている。

当初8人であった農村工房のコアメンバーは13人になり、食堂運営メンバーは9人、他のコミュニティ組織との連携も進んで、ますますの活性化を予感させるものであった。本気でやる気! 良い事例を見せていただいた。


前へ   次へ   INDEXへ